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FRIENDs -ars短編集-

第5章 ハチミツを添えて A×N

Aサイド


俺はかずにああ言われたにも関わらず、
局の外で待っていることにした。


雑誌の撮影だけなら、
そんなに時間もかからないはず…

1、2時間くらい、かずのためなら
長くもなんともない。


ただ話がしたかった。

かずの様子がおかしいのは俺だけじゃなく
周りの人みんなが気付いていた。


嵐内だけじゃなく、
マネージャーにも聞かれた。

二宮さんどうしたんですかって。

俺は知らないとしか答えられなくて
恋人なのに、と少し悔しかった。


今は8時。

9時か10時くらいには戻ってくるはず…


初夏だと言うのに、夜だからか
少し肌寒い中、俺は立ち尽くしていた。












…遅い。遅すぎる。

もう11時だ。

少し長引いたとしても、
もう帰ってきてもおかしくはない。


何かあったのかな…


そう心配になったその瞬間、
肩がじわっと濡れた。

雨だ…


最初は小粒だった雨も、
だんだん本格的に降ってきて
俺は局の中へ飛び込む。


そのついでに、スタジオまで行ってみた。


そこはもぬけの殻。

もう撮影は終わっているみたいだった。


「あの…ここでの撮影って…」


通りすがりのスタッフに聞いてみると、
もう30分前に終わったらしい。


かず…どこ行ったの…?


俺が見てない間に帰ったのか。

そんなに嫌だったのか。


かず…会いたいよ…


俺はかずの顔、声、香り…

全てを思い出して泣きそうになった。


でも目の端を拭い、
そのまま歩いていこうとした。

その時…


「まさきっ…ん…まさ、き…っ」


確かに聞こえた。

かずの、俺を呼ぶ声。


耳をすましてみると、
雑音ばかりが聞こえて
かずの声なんか聞こえない。


俺はついに幻聴まで聞こえるように…


そう落ち込み、自分でも呆れて
少し笑いそうになる。


「っまさき…やだっ、まさ…き…」

「…」


いや、やっぱりこれは幻聴じゃない。

確かにかずの声なのだ。


「…かずっ!?…どこ?かず!」


俺は頭で考えるより先に、
そう叫んでいた。

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