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FRIENDs -ars短編集-

第5章 ハチミツを添えて A×N

Nサイド


「っまさき…っはぁ、まさき…」


ここに、まさきがいて
身体全部で、温もりを感じて
まさきの声が、俺の名前を呼んで。


これだけのことがこんなに幸せなことを
改めて深く感じた。


…今はとにかく、まさきがいればいい。


っ怖かった…まさき…


考えれば考えるほど、
涙がとめどなく溢れてくる。

名前を呼べば、俺を抱き締める
細い腕にぎゅっと力が入る。


「…かず、もう大丈夫?」


俺はその問いかけにこくんと頷く。


「帰ろっか…?」


そう言ったまさきは、俺を立たせて
手を引っ張り部屋から出る。


今まで外で手を繋いだことなんて
ほとんどないのに。

その温かい大きな手が、
しっかりと俺の手を握っていた。


まさきは周りの目も気にせずに
ずんずん歩いていく。


「…まさき?」


前にいる背中にそう呼ぶと、
立ち止まってゆっくり振り向いて手元を見る。


「…嫌?」


そう聞かれ、俺はぶんぶん首を振る。

そんな俺を見てまさきは、
すっごく優しく微笑んだ。


好き…好きだ。

俺やっぱりまさきが好きだ…


そう思うと目の端が熱くなったけど、
涙を拭ってまさきに引っ張られるままに進む。

いつの間にかもう局の外で。

半袖の俺は、少し肌寒かった。


俺が少し身震いすると、
まさきはぴたっと立ち止まり
自分の上着を俺に着せてくれた。


まさきはそれを脱ぐと半袖。


「まさき寒いでしょ。俺いいから、着なよ。」


少し強がってそう言ってみても
まさきは頑固で、一歩も譲ってくれない。

俺は諦めて上着を着ることにした。


…あったかい。

まさきの温もりがまだ残っていて、
まるで抱きすくめられているみたいだ。



まさきが拾ったタクシーに乗り込んで
言った住所は俺の家。

この人俺の家の住所なんて覚えてたの…?

俺は少し驚いたけど、少し嬉しかった。

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