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FRIENDs -ars短編集-

第1章 一方通行 O×N

Nサイド


大野さん家の廊下を歩いてるとき、
ポロッと口から出てしまった。


俺はそれにひどく焦ってしまって、
でも、大野さんの答えは素っ気なくて。



そこからはあんまり覚えてないんだけど、
気付けば寝室のドアのそばに座っていた。


「…なんでこうなっちゃったかな……」


体育座りをしている足の間に顔をうめる。



こんなはずじゃなかったのに…
初めて大野さん家に来て、
特別扱いされてるみたいで嬉しかったのに…


やっぱり、俺なんか所詮セフレで。

大野さんにとっては、
俺のこんな行動もめんどくさいのかな。



「おーのさん…」



そう名前を呟くと、
いろんなことを思い出して

苦しかった。


大野さんの優しい笑顔を思い出して

泣きたくなった。


俺にとってはそれくらい
1番大事な時間だったんだ。




なんて、俺だけだったのかな…




ドアの向こうから大好きな人の声が聞こえる。


「ニノ?開けて?
俺言ったじゃん、話があるって。」


そうだったね。
ここに来たのは、
大野さんが話があるって言ったから。


でもその話も、
もうセフレなんてやめようって、
そんな話なんじゃないか。

俺の予感はだいたい当たるから、余計に怖い。


ただドアを開けて、好きな人に会うだけ。

それだけ。なのに怖い。


「ねぇ、ニノ。開けてよ…」


泣い、てる…?

その声は聞き慣れてる声じゃなくて、
もっと震えてる気がした。


俺は思わずドアを開けてしまった。


「大野さん…!」




「あ、開いた…んふふ…」



は?



そこにいた大野さんは泣いてなくて、
むしろ、微笑ってた。


嘘泣きだよ、なんて言うから
慌ててドアを開けたことが恥ずかしくなって
ドアを閉めようとした。


でもそれは大野さんの手に遮られて。



手を引っ張られて
そのまま、ふわっと抱きしめられた。

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