虹
第10章 LOVER
「はい、丸つけするよ!」
部屋には西島さんのペンを走らせる音だけが響く
5分ほどして、西島さんが喋り出した
「ミス特に多かったのがここ!ここができてないと、この先の単元ができないから…伸び悩み原因になってるかも」
答案用紙を見ると、赤と青のペンでしっかり解説まで書いてある
濃くて綺麗で読みやすい字、わかりやすい文章
この短時間でここまで書けるのかというほど
「じゃあ、この単元やってみよう!ワークの○ページの…」
「ここはこうだから…こっちに置き換えて…」
「そうそう!そんなかんじ!」
集中しているうちに、気づけば予定より3時間も多く勉強していた
母『すみません、夜遅くまで…』
「いえいえ!予備校の生徒は昼間の指導ですし、夜は令ちゃんだけなのでいつでも大丈夫ですよ!」
『そうですか…でしたら、お願いがあるのですが…』
" どうされました? "
『実は…明日から、仕事で夜は遅くまで帰ってこれなくなるんです…なので、それまでの間、令をみていてもらってもいいですか…?食事も、その分の費用もお支払いしますので…』
" 費用なんて貰わなくても、いつでも面倒なら見ますよ! "
『本当ですか!?ありがとうございます!』
なぜか、西島さんと一緒にいるのは嫌だと思わなかった
教え方もわかりやすいし、自分のペースにどこまでも合わせてくれる
目を見て話してくれる、自分を知ろうとしてくれる
心から見てくれている、そんな気がしたから
" 西島さん…今日はありがとうございました "
「いえいえ!じゃあまた明日!何かわからないところあったらLINEしてね!」
爽やかな笑顔で、西島さんは帰っていった