虹
第10章 LOVER
" 私は…花笠東高校に行きたい… "
「理由は?」
" 花笠東は、デザインについて学べるコースを1年生の後半から選択できるの。将来、いろんなもののデザインに携わりたい "
ちらっと母の顔を見ると、呆れた表情をしていた
『令、しっかりしてちょうだい。そのことは昨日…』
"私は花笠東に行く。そのために勉強する"
『…令!!!!どうしてあなたはそうなの!?育はね、毎日八代に行くために必死に…』
「ストップ」
西くんの声で我に返る
「お母さん。僕の仕事は、生徒を志望校に合格させることなんです。お母さんの希望を叶えるのが仕事ではないです。」
『…じゃあ、親の意見は聞かないって言いたいんですか?』
「令ちゃんは自分の思い通りに動かすための駒なんかじゃない」
『そんなつもりは…』
「令ちゃんには、まだまだ伸びれる才能があります。それを潰してしまうことだけはしたくないんです。本人の意思を尊重してあげてください。」
今まで見たことないくらい真剣な眼差しで、突き刺すような言い方
西くんの男らしい場面を見たのは初めてだ
って、そんなこと思ってる場合じゃないけど
" 八代には絶対に行かないから "
隣にいる母に向かって冷たく一言
すると、母はゆっくりこちらを向いて立ち上がり、その場で微笑んだ
理解してくれたのかな
そう思い一つ息を吐いた瞬間
思いきり右頬を殴られた
その衝撃で床に打ち付けられ、頭をイスと床に強く打つ
" いっ…たぁ… "
「令ちゃん!!」
視界がぼやける
遠のく意識の中、ひとつだけ聞こえたのは西くんの、私を呼ぶ声だった