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第10章 LOVER





うるさい雨の音の中に、確かに聞こえた自分を呼ぶ声







忘れるはずがない、あの人の声








ゆっくり声が聞こえた方を向くと、紛れもない西くんの姿があった







走ってきてくれたのか、息が切れている








" なんで… "


「帰るぞ」






そう言って私の手を強く掴んだ






" いたっ… "






掴む力が強くて、握られているところが痛い




声もすっごく低い



目も態度も冷たい



しかも、呼び捨て



こんな西くん、見たことない







怖くなって、掴まれた手を振りほどいた







「 何してんだよ。早く…」


" 怖…い…… "






必死に涙をこらえてそう告げた



私が大好きな西くんはこんな人じゃない



西くんに掴まれた手がジンジンと痛む




色々な気持ちが複雑に絡み合う









沈黙に耐えきれず顔を上げると、頭を掻き、苦笑いしている西くん





いつもの、大好きな西くんだ







「ごめん…俺…馬鹿みたい…」


" …… "


「令ちゃん…ごめんね…」






そう言って、私を抱き寄せた



こーゆーことされるとまた自惚れちゃうんだよ



んで、また同じように泣くことになるんだよ







わかってても、西くんの腕の中にいたかった



自分で思ってる以上に、西くんのこと好きみたいで…








「…令ちゃん、体冷たいよ。」





体を放し、自分が着ていたコートを私にかけた






" これだと西くんが…それにコートも濡れちゃう… "



「俺は北海道の人間だよ?こんくらい平気(笑)」






また、西くんが私の手をとった




今度はとても優しく…







「さ、帰ろ!」

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