ある晴れた冬の日に
第5章 故郷へ
その部屋に入った瞬間、
私はなぜか初めてここへ来た気がしなかった。
そんな気持ちを抱えて目に留まったのが…。
そのパズルは有名な画家の、深海をダイナミックに泳ぎ回るイルカの絵で、私は吸い込まれるようにじっと見入っていた。
「こんなに細かいピース、相当時間がかかったでしょうね?」
「彼女とやったんだ」
「やっぱり、そうだと思いました。ほんとに仲が良かったんですね?」
「まあね…ほとんど一緒にいたから」
「…」
「もう下へ戻ろう」
「私、もうちょっとここにいます」
「そうか?じゃあ先に行ってる」
「はい」
静寂な部屋にいると、
どこからか
《……フフフッ……》
《……アッハハハ……》
男女の笑い声が聞こえる気がした。
遠い昔の残響だろうか?
先生と、今はもういない彼女との…。
《……じゅんは、私のどこが好き?……》
ドクン、ドクン、
また、あの女の子の声だった。
待って?
"じゅん"って…その名前は、もしかしたら………。