テキストサイズ

Christmas短編集

第3章 ささやかな幸せ

「今までありがとう」

 激しい音にかき消されぬよう、直樹は叫ぶように言う。

「嫌だよ」

 やっと口から出た言葉。それは、直樹を困らせることで。

「でもな、俺の都合で有希を振り回すわけにはいかない。有希は、見習い何年もして、やっとデザイナーになれたんだ」

 直樹は私の夢を一番に応援してくれた。だけど……。

「そりゃ、あたしは夢を叶えた。これからだってトップになるって夢を追い続けたい」

「だったら!」

 直樹は声を荒げる。

「でもそれには直樹が必要なの。直樹がいたから頑張れる」

「そうじゃないよ。俺が居なくても有希は大丈夫。俺はなにもしていない。有希が頑張ったからだよ」

 いつもは、甘えてばかりで弱い。今日も直樹に押されている。いつの間にこんなにも成長したのだろうか。なのに私は……。いつも直樹に甘えてばかりで、今だってそう……。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ