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Christmas短編集

第3章 ささやかな幸せ

「どうして、そんなこと言うの? 気持ち、変わっちゃった?」

「なにも変わってなんかない」
 
 直樹は優しく微笑んだ。分かっている、そんなこと。だけど言いはじめると止まらなくて。

「直樹は、自分でなんでも一人で決める。私はそんなに頼りない? 信じられない?」

「そんなこと……」

 直樹は口ごもる。

「四年も一緒にいて、別れ話を一人で決められて、その理由も嫌いになったとかじゃない。納得できるわけないじゃない」

 声がうわずって、周りの人は、私たちをちらちらと見て通りすぎていく。

「わかった、わかった。ごめん、有希」

 直樹はいつもみたいに優しく謝った。

「私、直樹が帰るまで、いつまでだって待つよ。ほんとは、連れてってって言いたいけど直樹は、私に夢を諦めずに追って欲しいみたいだから」

「ありがとな」

「うんっ」

 私は笑顔で頷く。

「なぁ、有希、俺が戻ったら結婚しよう」

「ん」

 いつの間にか雨はあがっていて、空には虹が輝いていた。

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