テキストサイズ

密猟界

第8章 狩りの時刻

「聞こえますか」午前3時、反キリストの時刻。…魔の刻だった。「あぁ、チャンミン」うつむき、耳を澄ませるチャンミン─壁の格子模様が、十字架に見え、祈りを捧げるような姿にユノは、微笑む。
 コン、コン…。
ドアをノックするように、チャンミンは壁を軽く、叩いた。「ユノ」「どうした」「鏡─」振り返って「これか?」革のTシャツを着たユノを、鏡が、映し出している。
 「もしかして」チャンミンがユノと並び、「マジック・ミラー」楕円形の鏡を凝視した。
 ふたりが楕円の鏡に、映る。「オペラ座の怪人、みたいだな」「向こうから」「うん?」「…こっちは丸見え、かもしれませんよ」ユノは笑い、「見せつけてやろう」唇を軽く、重ね合わせるふたり。……けものが、幅のある体を、壁の向こうに擦りつけながら、遠のいていく気配…。チャンミンがユノを見る。「こそこそ嗅ぎ回って─ご苦労だな」ユノの口元には皮肉な笑み。 
 ─腕の金の輪に、チャンミンが触れ、「上へ登りましょう」楕円の鏡の反対側の壁が押すと開き、チャンミンは螺旋階段を昇りはじめた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ