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密猟界

第10章 最終出口 

 彼は緑のセーターから剣を引き抜き、天井に向け、突き刺した。胴体の鱗から鮮血を滴らせ、異様な哭声を発し、彼を呑み込もうと、長い巨大な体を折り畳むようにねじ曲げて、迫る。
 ユノはチャンミンを突飛ばし、鏡の向こうへと、押しやる。
 唾液を滴らせた牙を剥き、大蛇は赤いトンネルの入り口のような口腔を開け、空中を滑る動き─天使は蛇の顎の下に疾風のように走り、逆鱗を飛び上がって、剣で刺した。
 石室が、振動する…のたうつ大蛇は、滝の勢いで血を撒き散らす。巨大な頭部を、あちこちに打ちつけながら、荒れ狂った。
 肩を力強い手で起こされる…長い髪に熱い瞳…もうひとりの優しげな貌の、天使だった。
 「ユノッ」鏡の向こう─トンネルに似た通路の奥で、チャンミンが叫ぶ。
 立ち上がり、走ろうとしたが、足元がぐらぐら揺れる。
 断末魔の大蛇は、血飛沫で赤く染まった鱗を光らせた。
 両脇をふたりの天使に抱えられ、ユノは鏡を通り抜ける。
 ─背中に血の匂い、化け物の生臭い匂い─、追いかけてくる…懸命に足を動かしたが、ユノは自分が走っているのか、天使に支えられ、空中を飛んでいるのか、わからなかった。

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