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密猟界

第3章 嵐吹く刻も─.

 「…でも…やっぱり…、云えなかったな。僕って─何で…こんなに、臆病で、内気なんだろう……」のろのろと、ユノのゆったりとしたクリームがかった白いシャツを、チャンミンは脱がせていった。「俺に…云えない。どう─して」見つめながら、チャンミンに、ユノは声を絞り出した。
「日曜日だって、たまにしか休めない。それでも、朝から出かけてく─真面目に、…几帳面に、スーツ着て…ユノ…」俯けた首筋にチャンミンは軽く唇を開き、当てた。「俺に─遠慮して……」「はい」─ユノの胸に顔を埋めるチャンミン。
 「ユノを、─抱きたかった」寝言のように、呟いた。「え─っ…?」「教会に出掛けるユノを─です」「あぁ…」何か云いかけたユノの唇を、塞いだ。
「そう…。こんな…ふうにしてね」「チャンミン─」「…濃い…枯れ葉みたいな色のスーツ…。…ユノ似合って、大人っぽくって…。─そのミサに行く為の服を、引き千切って…僕って、愚かだね、こんなことにしか関心がないんだから─ね…?」ユノが、低く、呻き声を、出しはじめた。
 ──風の唸りが、その途切れがちの声を、押し潰す。





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