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密猟界

第3章 嵐吹く刻も─.

 不意に顔をあげたチャンミンが「僕を抱いたこともあったよね…教会に行く朝─」ユノの肩を、やわらかく、撫でながら「シャワーを時間を掛けて、浴びてた。─ユノ…。潔癖症…」胸の鼓動にキスを繰り返した。
 「あなたがた─。…なにをそこで、してるんです─!?」礼拝堂の中いっぱいの、金切り声─。   


 チャンミンが振り向く…。全身、黒ずくめの烏のような中年の女が、入口に突っ立って、二人を、睨みつけていた。
 「ミサ…終わりましたよ。とっくにね」無視して、ずかずかと礼拝堂のなかに案山子そっくりな足を運んで来る。「ミサですって? 信者でもないくせに」鳥の骨で組み立てた感じのする身体つき─。痩せこけた中年女は腕組みをして、黒カラスが、餌を漁るようにあたりにキョロキョロと目をやる。「クリスチャンですよ…彼」自分の身体の下で、もがくユノに顎をしゃくり云うと、「あなたはどうなの」じろりとチャンミンを見下ろす。 目の隈と窪み、皺が老魔女を思わせた。「僕は異教徒です」「じゃ何してるのよ」「愛の儀式です」「なにが愛よ…男同士で…気持ち悪い」紫の口びるは干し葡萄を連想する色。

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