
密猟界
第3章 嵐吹く刻も─.
風の邪悪な空気を切る音。
消えた女の断末魔の悲鳴のようにも聴こえた。
「ユノ」チャンミンは夢から覚めた、冷ややかな声になっていた。
唇元には、ほの青い影が揺らめく…「この教会、変です、さっきあの中年女─匂いが、燃えた時…」「燃えた?」「とにかく─ああいう、同じ匂い。…やっぱり、女から…」「髪の長い、緑のセーターの…?」「そうかもしれません。僕よく憶えてない…それより」ユノの前のテーブルに手のひらをおくと、「僕ここに、ミサの前に聖書だけでも用意しておきたかったんです。でも─どこにもこの教会、聖書がない」
「聖書。…燃えた─? 匂い…」「分かりませんでした?」「お前─神経繊細だから」恐ろしい魔物がひそんで、耳をすましているに似た静けさ─。
「聖書のない教会─」「祈祷書も、讚美歌集も、ありませんでした」
窓越しに別の魔物の唸りが、する。
「ユノ」両の肩を抱いた。「ハリケーンも、来ます…ここから逃げましょう」
消えた女の断末魔の悲鳴のようにも聴こえた。
「ユノ」チャンミンは夢から覚めた、冷ややかな声になっていた。
唇元には、ほの青い影が揺らめく…「この教会、変です、さっきあの中年女─匂いが、燃えた時…」「燃えた?」「とにかく─ああいう、同じ匂い。…やっぱり、女から…」「髪の長い、緑のセーターの…?」「そうかもしれません。僕よく憶えてない…それより」ユノの前のテーブルに手のひらをおくと、「僕ここに、ミサの前に聖書だけでも用意しておきたかったんです。でも─どこにもこの教会、聖書がない」
「聖書。…燃えた─? 匂い…」「分かりませんでした?」「お前─神経繊細だから」恐ろしい魔物がひそんで、耳をすましているに似た静けさ─。
「聖書のない教会─」「祈祷書も、讚美歌集も、ありませんでした」
窓越しに別の魔物の唸りが、する。
「ユノ」両の肩を抱いた。「ハリケーンも、来ます…ここから逃げましょう」
