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密猟界

第3章 嵐吹く刻も─.

 「逃げる…、何処?」「掃除してて見つけたんです─こっちです」チャンミンはユノの手を取ると、そのまま走り出す。
 ハリケーンより早い猛烈な風に吹き飛ばされてゆく感じが、ユノはした。
 礼拝堂を後にして、嵐をはらんだ黒雲が薄暗くしている廊下を、二人は奥へ奥へと走る。
 「あそこです─」走りながら、チャンミンは壁の片隅を、指差す。
 掃除道具が、そこにはまとめて置かれていた。
 「─ここです」薄暗い壁のひとところをチャンミンの手が、押し開ける。
 「なんだろ…洞窟?」「洞穴─ほらあな、みたいでしょ? でも違うんです」チャンミンが片手を伸ばした。
 「これ─みんな押し込んで、あったんです」掃除道具のひとつを、手に取る。「道具入れ…?」「掃除の道具を入れて、収納庫にして、誤魔化そうとしたんでしょうか」「誤魔化す? ─」「壁の穴…ドア、入り口の形にひびが、亀裂が残った。…それを隠そうとした」 ユノは、改めて壁を見て、指でギザギザの壁に走る線を、なぞった。「ドアの形にくりぬいた?」「はい。でもそれを止めたんでしょう、入り口にしなかった」「どうして─?」 チャンミンは黙って、ほらあなの奥に入っていった。

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