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密猟界

第3章 嵐吹く刻も─.

 愛するひとを、何処までも、追いかけて地獄の底までも、行こうとする─そんな想いが、象られたようなチャンミンの横顔を、ユノは暗がりのなか、見る。
 「これ、見てください…ユノ」チャンミンが壁の一部分を動かした─それは錆びた壁のいろと同じ、ドアだった。
 「なに…何の為の─ドア?」「爆風から─防風扉…」「核シェルター…。入り口─なの?」チャンミンの瞳はドアを、見据えている。「チャンミン?」 口を閉ざしてユノに向きなおった。
「…チャンミン…」「ユノ。震えてますね。声が─」闇の中での、抱擁…。「身体も…ね─」囁く声が、暗がりの中で、熱かった。
 「怖い、…戻ろう? チャンミン─」「何がです…ユノ?」黒い闇で、表情はわからないが、チャンミンの声は優しい。
 …ユノは黙って抱きしめられるままになっている─。と、「寒いんですか」そのチャンミンの労るような小さく呟くような口調に─ユノの身体中は小刻みに、震え出した。
 ……今度はチャンミンが、黙ったままユノを更に腕のなかに深く、抱きしめる。
 抱きしめ合うふたりはまるで、夜道に迷った二人の子供が途方に暮れて、抱き合っているようだった。

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