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密猟界

第4章 闇の中の謝肉祭(カーニバル)

 「…チャンミン」顔を上げ、「乾いてなくてもいいよ、俺の服持ってきて─」「風邪ひきますよ…生乾きの服なんか着たら─」「着ているうちに乾くよ」「だから、着ているうちに風邪ひくんですよ」ユノはため息をついた。
 チャンミンが壁の出っ張りの向こうにまわり込み、黒っぽい布地を腕に掛けてきた。ベッドの傍に立つとそれを両手で広げ、ユノに示した。
 「これは─どうですか?」黒い千鳥格子のワンピース。紅いベルトも付いている。「チャンミン。…いいよ」ユノはシーツを身体に巻きつけた。
 ─ベッドから下りる。 「俺のリュック…どこ?」あたりを、見まわした。(あ…)チャンミンがユノを見据える。「はい。昨夜…泊まった部屋じゃありません」身体を近づけ、「でも、─ここも教会のなか…奥ですよ」「奥?」チャンミンはユノの肩に片手をおいて、「倒れたユノを、僕ここまで抱いて運んだんですよ…」肩のチャンミンの手の重さを、ユノは異様に感じ、「あ─。大変…だったろ…」チャンミンのそばから、逃げるように身をかわした。
 「ユノのバッグはここです」ベッドの下から、取り出される。

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