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密猟界

第4章 闇の中の謝肉祭(カーニバル)

 ─拾い上げる。
 黒い帽子…、つばの広い、羽根飾りと短いベール…も黒かった。黒鳥の死骸を思わせる帽子だった。  
 ユノは試着室を飛び出す。



 「どうしたんです」畳んでいたドレスをそのままにして、チャンミンはユノのすぐそばに、きた。
 大テーブルにひろげられたままのそれは、闇夜を思わす黒い絹の光るチャイナ・ドレス。
 ─チャンミンの顔を見て、ユノは口籠った。
「服は?」「え…?」試着室のドアに目を向け、「なかですか─置いてある?」頷くと、ドアをチャンミンは開けようとする。「チャンミン─」白いドアの奥に、背中は消えた。…やがて、現れたチャンミンはユノの服を脇にかかえ、ドアを片手で閉じた。「ユノ。なかに下がってる黒いの─、あれ…ウェディング・ドレスじゃないですか」「ウェディン…グ─ドレス?」「そうだと思います」「……上から帽子も…黒いの…落ちてきて─」 黙ったまま、チャンミンはユノの服を、銀色の円柱のような丸い椅子の上にのせた。 
 それを手早く付けながら「気味が─悪いな」試着室のドアをユノが振り向くと、「気になります?」

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