
密猟界
第5章 インターリュード
「どこ行くんだ?」暗い山が見えた。「わたしの部屋よ」「え?」車は大きく道路を曲がって、急な坂を猛烈なスピードで登りはじめた。「止めろ」「どうして」「帰るんだ」「どこに」「俺の家に…」香水が強く匂って、俺の太股を真っ紅な長い爪が撫でている。「あなたが欲しい。食べたいの」車はどんどん登っていく。「わたしのなかに入るのよ─帰れないわ」サイド・ブレーキを思いっ切り引いた。女の手が、ハンドルから離れ俺の首に巻きつく。スレンダーな体が、俺の上で重くなっていった。女の笑い声…螺旋階段を下りるように、くるくる回りながら、落ちるのを感じる。(チャンミン…!)赤い薄い唇のヌメヌメと冷たい感触が、首筋にあった。真っ赤な長い爪と尖った歯が、首の肉を食む。長い黒髪は俺の指に絡みつく。自分の首筋から胸元に、温かいものが流れる……
