
密猟界
第1章 雨の中,傘のなか。
その家の奥隣にある、水車小屋を思わすやや小さい家が、黒っぽいドアをこちらに向けている。
その拍子に傘は揺れ、雨を含んだ風が吹く。
「ユノもう少しです」「うん、歩ける─よ─」ユノのその言葉を途切れさす風切り音がした。ハープを掻き鳴らすのにも似た雨降りの音。
二人の行く先にも後にも、人影も犬一匹さえ、通り抜けることはなく、ただ雨風だけが吹き抜けるゴーストタウン…。
──明るいピンクのお菓子の家、そこだけは、雨雲の上の太陽の光が差し込む感じだった。
「こんにちは─…!」チャンミンが明瞭な発音の外国語で、お菓子の家に声を掛ける。
何も返事は無い。「こんにちは。─誰か、…いますか?」
ちいさなお菓子のお家は、黙っているだけ─。正方形の窓には水色のブラインドが下りている。
「居ないんだろ…」ユノは呟きながら、壁の下のベンチに似た出っ張りに、体を凭せようとした。
チャンミンが家の横手から細長い箱形のものを持ってきて、ユノを座らせた。
「やっぱり可愛い。ピンクのお家…か」明るい色調の壁を撫でながらユノが、云った。
その拍子に傘は揺れ、雨を含んだ風が吹く。
「ユノもう少しです」「うん、歩ける─よ─」ユノのその言葉を途切れさす風切り音がした。ハープを掻き鳴らすのにも似た雨降りの音。
二人の行く先にも後にも、人影も犬一匹さえ、通り抜けることはなく、ただ雨風だけが吹き抜けるゴーストタウン…。
──明るいピンクのお菓子の家、そこだけは、雨雲の上の太陽の光が差し込む感じだった。
「こんにちは─…!」チャンミンが明瞭な発音の外国語で、お菓子の家に声を掛ける。
何も返事は無い。「こんにちは。─誰か、…いますか?」
ちいさなお菓子のお家は、黙っているだけ─。正方形の窓には水色のブラインドが下りている。
「居ないんだろ…」ユノは呟きながら、壁の下のベンチに似た出っ張りに、体を凭せようとした。
チャンミンが家の横手から細長い箱形のものを持ってきて、ユノを座らせた。
「やっぱり可愛い。ピンクのお家…か」明るい色調の壁を撫でながらユノが、云った。
