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密猟界

第6章 闇の中の謝肉祭(カーニバル)Ⅱ

「ワインを入れて蒸すと、柔らかくなるんです」
 サラダを口に入れて、赤い発泡酒のグラスをかたむけ、「よく合うね」瓶をとりあげた。
 「ユノ…飲み過ぎないで─」ナプキンで口元をそっとおさえた。「このくらいなら、平気」「くち当たりいいから、ほどほどにして─ね?」頷きながらも、グラスをあおる。「チャンミンも…飲むだろ」やや赤みがかった頬でユノが訊く。
 「少しだけ─、ユノもそうしてください」真顔のチャンミンに笑って、酒瓶を傾けた─。
「チャンミンも食事すんだら、寝たらいいよ」パスタの残りを、フォークに巻いた。
 「─僕はいいです」バジルの皿は、空になっている。「眠くないのか」「はい」グラスから唇を離し、「鎖も取った、…そろそろ地上に出よう」フォークを置き、「ハリケーンも止んだろう」─────…………………………「俺─酔った…かな」頬を軽く擦る。「そんなに、飲まなかった」パステル色のナプキンに片手をのせて「怠い。眠くなってきた俺…」無言のチャンミンに、無理に、ユノは笑いかけようとした。「……」テーブルの皿の傍らに、うつ伏したユノに、猛禽類の眼差しをチャンミンは冷たく当てる──。



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