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Best name ~ 追憶 ~

第2章 私の希望

さっさとサービスのものを置いて
立ち去ろうとすると

酔っぱらいの方が大声で私に……からむ。

トナリに座れ、と…。









イヤだ…。


そんなのムリだ。





酔っぱらいが、うなだれて
ガシャガシャとテーブルのグラスを動かしていた


ちょうとミカがそのテーブルについていたから
私は逃げるようにそこを去る。


『アイ~~!アンタねぇ~;』


一言の接客も…笑いもしない私を見て
ミカが少し突っつく。



……時間だ。



ミカに告げて、私はフロアを去った。




…お客さんの前で
こんなのって……絶対マズイんだよね…。






それでも私は
それが精一杯だったのだけれど…。





私の勝手な事情は
お客さんには関係ない。


罪悪感がわいた。




最後のテーブルの…

酔っぱらいじゃない方の
静かにお酒を飲んでいた男の人…。


酔っぱらいのグラスのお酒が
ズボンにかかったのを…偶然みてしまった。



少し……迷ったけれど
キッチンから拭くものを持って
早足でそれを届けた。



近づくの……コワイ…。


だけど…。




黙ってそれを手渡した私を見て
その人は不思議そうにしたけど

『ありがとう』と

言ってくれた。


少し……ホッとする。





『…わるいね。上がりだったんだろ?』




……。




〃え?〃




意外にも、そのお客さんは
私を気遣ってきた。


……お客さんなのに。




『いいの……。…ご…ごゆっくり』




私を気遣ってくれた お客さんに
最後くらいは、と
接客らしい言葉を、なんとか絞り出して去った。


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