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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

『アイルはいつもオシャレだね。カワイイ』


いつものように
私の勉強に付き合ってくれていた彼から
こんな言葉が出るようになったのはこの頃だ。


うんと年上の人とかではない

異性に…男の子に

面と向かってそんなことを言われるのは
初めてでドキドキした。

どうしていいのか
なんと答えればいいのかが
わからなかった。




『アイル?…オレと付き合おうよ』




私の隣に座り直した彼が、そっと囁いた。
さりげに髪の毛を撫でてくる。


『えっ…!?』


ガチャンっ…


持っていたケーキのフォークが
私の手から滑り落ちた。


『ふふっ…焦りすぎ』

彼は笑ってテーブルについた
クリームを拭いてくれていた。

『~~~』

『ウワサには聞いてたけどさ
アイルは彼氏はつくらないの?』


『え…?』


〃ウワサ〃…。

また…ウワサかぁ…。

少しモヤモヤとした。



高校生だった私には
大学生の彼は大人びて見えて

何より…私とは違って
恋愛経験も沢山していて…

と、そんな事を思っていた。


しどろもどろする私に相反して
やさしい笑みを向ける彼。


『オレ、アイルみたいな女の子っぽいコ
めちゃくちゃ好きなんだよね。
て言うか、アイルのコト
高校の時からずっとイイと思ってたんだぜ』



…なんて答えよう。
何か言わなくちゃ…。


そう思えば思うほど、バクバクと心臓が鳴り
顔も熱をもってくる。


『~~アイルは告られても
誰とも付き合わないって聞いてさ
…~ショックだったぜ~?』


『…そんな…べつに、そゆんじゃ…』





『ならオレと付き合おうよ。
オレじゃダメ?~イヤなの?』


『イヤとか、ダメっていうんじゃ…
私……よくわからないの。…』



これもまたありのままに答えた。



『アイルらしくていいんじゃない?
これから経験していけばさ。ね?』

『……う…ん』



『それともアイルはオレがキライ?』

『ううん…っ、それはちがうよっ?』



『じゃあ決まり!!!な?』

『……ぅ……ん』


押しきられたようにも思えたけど
首を縦に振ってしまったのだ。

本当に、本当はイヤだった訳でも
なんでもないけれど
…そういうことになった。



出会って1ヶ月もしないころだった。



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