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Best name ~ 追憶 ~

第2章 私の希望

『言いたくないことを聞こうとは思わない』




彼の返答は
変わらずやさしいものだった。




言葉を探す私は
もうメチャクチャを言っていて…


〃ソウタさんと仲良しだから
聞いてると思って…〃


なんて
自分に都合の良いことを言ってみたり。



そんなワケがないのに・・・



知っていたら
こんなに仲良くしてくれたり
そばにいてくれるハズがない・・・






それでも彼の返答は同じだった。


そして彼は足早に家を出ようとする。






・・・こんなやさしい人に

うそをつけない。





元より……何とも
言い逃れのしようもない……。





背を向ける彼に…

私は言ってしまった。


自分の身の上を……。







私は犯罪歴がある人間だ…。






ピク・・・






後ろ姿の彼がピクリと止まり
私の方を振り向いた。



キリっとした眉が少し動いて

そして少し

ひきつりそうに笑った。



〃『なんの冗談だよ?』〃
とでもいう顔をして・・・。






そう・・・思うよね。


そう思うくらい・・・


普通じゃ考えられないことだよね。







だけど

冗談じゃないの・・・

それが私なの・・・。







『またな』



……最後にそう言って
彼は出ていった。



彼はウソはつかない。



だけど

この時の、彼の〃『またな』〃は

私には

私にとっての二度とない「また」

のように聞こえた。

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