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Best name ~ 追憶 ~

第3章 私の大切な人

コワイ・・・。


本音は、それ一色。





声なんか出ない。





蹴り飛ばしてでも逃げよう



・・・きっとそんなことも難しい。





私は過呼吸だけは・・・苦しいのだけは
なんとか静めようと

少しでも冷静になれるように
脳に酸素がいくように

とにかく必死に息を吐いて
呼吸を整えようとしていた

・・・気がする。






どこかに連れていかれるなら

今のこの場よりは
逃げるチャンスがあるかもしれない。



車から降りる瞬間に
必死に大声を出せば

助けを求められるかもしれない。




少しでも時間稼ぎできれば
ソウタさんが不審に思って
警察に行ってくれるかもしれない。





私は必死に自分を勇気づけて
希望を探した。




ハァ・・・ハァー・・・っ




落ち着いて・・・もう少し・・・










ギシ・・っ・・・





〃・・・!?〃







両足首が縛られた。








痛い・・・




いやだ。





だけど


私はじっとしていた。

多分・・・抵抗しない方が良いし



おそらく


移動する。






消去法のような
僅かな安心や希望を拾うことを繰り返して
私は呼吸を整えようとしていた。







そこへ…







ビクン・・・っ









『フフ…ゴメンね?アイル。
ちょっとの辛抱だからね?
イイコにしてて。…ん』



勝ち誇った顔で
おそらく心にもないことを
笑いながら囁き

悪魔が顔を近づけてきて
私の口を塞ごうとしていた。


『・・・っ!』






それは・・・不利になる。





私は反射的に顔を反らして
抵抗してしまった。




いけない・・・。




でも、それよりも
私は必死に抑えた呼吸が

一気に
簡単に再び乱れてしまった。

ヒクヒクっ…


ドクンドクン……






『…声も出なそうだし?まぁいいか…』








そう吐き捨てた悪魔が
口を塞ぐのを中断したのち

タオルを手に取って紐状にすると
私の目を覆い隠した。




『・・・~~』





危機的状況に変わりはないけど

一旦の安心を得た気持ちで

私はじっとしていた。








『……オイ?』








ギクッ・・・



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