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Best name ~ 追憶 ~

第3章 私の大切な人


『生きててくれて・・・ありがとう』












彼の口から出た言葉・・・。




・・・。



・・・・・。




誰かに




こんなことを言われたのは




後にも先にも、この人から・・・


この時だけだと私は思う。









そしてその言葉が、私に

〃生きている〃

と、実感させる。



そして、それが
誰のおかげなのかをも・・・。





全身に
だんだんと血がめぐっていくように
私の意識がハッキリとしていく・・・。





悲しそうに・・・

それでいて、やさしい眼差しで
私を見つめる彼・・・。



片腕で私を
そっと抱きしめる彼は・・・

右手をポケットにいれたまま・・・。








彼は…普段そんな仕草はしない。



彼は・・・


この人は


本当にやさしい人だ。







まともに…ろくに意識のなかった私でも

彼が少なからず負傷していたことは

聞いていた。

ちゃんと…覚えている。







私を・・・助けるために。









右手を引っ張ろうとする私を
彼は止めてごまかそうとした…。



私は・・・

〃「知っているよ」〃と告げて

彼の手をとった・・・。






肘が・・・


そして、大きな手が


白い包帯でぐるぐるに巻かれていた。







・・・こんな大怪我をしているのに



私を気遣って・・・。









涙が止まらなかった。




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