テキストサイズ

Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

状況も何もわからない

だけど
体が勝手に信号を発する


〃ココカラ…ニゲナクテハ…〃


しりもちをついたまま後退りし…
なんとか裸足のまま立ち上がり
走り去ろうとした




『……捕まえて~』

私の方は見ずに
ケータイを片手にいじりながら
仲間に指図するセイゴの姿が横目に映る

脚が震えて思うように動かない
私は振り返らずに必死に走る。








『きゃぁっっ…』


一人の手が、背を向ける私の髪の毛を
つかんで引っ張った


「~ホラ、逃げんなってさ♪
カレシが呼んでんぞ?
んなビビるコトねーだろ~」

『やめてっ…いたいっ…はなしてぇっ』

「暴れんなっ!オラ、こっち来いっ」



男に引きずられてセイゴの前に連れ戻されると
すぐに頬を平手打ちされた。

『っっ…』

ビリビリっと頬に衝撃がはしる。

「~オイオイ、セイゴ~!
顔はヤベーだろ!?イキナリひっぱたくやつが
あるか~?!ヒャハハハハ~!ありえねー」

「てか、オマエがバレるトコは
やめろって言ったんだろーがぁ?
つーか、自分の彼女マワすって時点でオニだろ!
マジ、キチガイ~!ギャハハハハっ」



『……。あー?……っせぇなぁ
オレ、ゆーこと聞かねぇオンナ…
マジ キライなんだわ…。
しつけだよ、シ・ツ・ケ……』



……。


夢でも見ているのだろうか?


見たこともない、冷酷な顔をした
大好きだった彼…

聞いたこともない乱暴な口調

驚き…戸惑い…恐怖

そんな私を誰も待ってはくれず
時が過ぎていく。

私の目や耳には
次々とおぞましい光景や言葉が飛び込んできた。


『フフっ…キミがいけないんだ。
散々オトコを挑発してもったいぶるなよなぁ?』

『せ…ぇご……何いってるの…私…』

『言っとくけど
こうなったのはアイルのせいなんだよ?
お前が全部悪いんだ』


本当に言ってるコトがわからなかった。

考える余裕がなかっただけかわからないが
自分に向けられる言葉が何一つのみこめない
そんなキモチだった。


『…メスガキが、いつまでもジラしやがって…
手間かけさせんなよナァ?』

『せ…ぇご?』

『散々オジョウとレンアイごっこしてやったんだ。
思いきり喰わせろよ?…オジョーサマ?』


セイゴは言い放つと再び仲間に向けて
顎をしゃくりあげる…。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ