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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

いやだ……。

痛いよ……こわいよ。


こんなの……耐えられない。



ただひたすら泣くことしか出来ない私に





コツ……。



わずかに動いた私の右手に
冷たい……硬いものが微かに触れた。



ずっしりとした重みのある
鈍器のような……。








これは
幸か不幸か……


どちらであろう



運命の、分かれ道。




考える暇もなければ考えてなどいなかった
…いられなかった。




無意識……ではないかもしれない……本能的…。




私の右手は、男たちに気付かれないように

そっと…

そしてギュっ……と…


石を握りしめていた。







〃ここから逃れたい…どんなことをしてでも…〃











『フフっ…この瞬間だけを楽しみに
お前に近づいたんだぜ…?…長かった。
中々イイ、ゲームだったぜ。クククっ』




悪魔の手が私の下半身に執拗に触れる。





いやだ…


それ以上近づかないで。


さわらないで。


私の胸に顔を埋めようと
眼前にその姿が近づいた、その時……

















グシャっ……。






私は右手を振り上げた。


考えたらためらってしまう。


目を閉じて一瞬で振り下ろす。







ザクっ……というような感触…。
鈍い音……そして、男のうめき声。


バタっ……


目の前で倒れた男は、頭から血を流していた。




人を……殺めた。




私はそう思った。









夢も幸せも……全て
幻に……ついえた。



すべてなくした……。



わずか一瞬の出来心……。





私は人生最悪の日を迎える。




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