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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

眠れなかった私は、じっと朝を待ち
日が昇るのと同時に
そっと一人…家を出た。



さようなら……パパ、ママ…



さようなら……私。









そう…私は
そう思うことにしていた。


〃私〃は死んだ。




昨日あんなことがあったのは私じゃない。


昨日までの私は死んでしまったんだ。









なんともめちゃくちゃな理屈を組み立てて
思い込み
別の私になろうとしていた。





そして最寄りの警察署に行く。



私は、もう泣くことはなかった。






『私……人を……殺しました』







職員が驚きつつも私を直ぐ様奥へ連れていき
事情を聞かれた。



聞き取りをされ、事実を確認ののち
私は逮捕された。


そして
ようやくここで知る。


あの人は…死んではいなかった。


意識不明の重体だが、生きているという。



おかしな言い方だけど
この時、その事実に
私は何も思わなかった。



良かったとか悪かったとかでも
なんでもない。



たまたま…


殺人が傷害になっただけだから。



私は…相手が死ぬかも知れないとわかっていて
手を振りおろしたことに違いはないだろうから。



〃嘘をついてはいけない〃


誰もが幼い時から言われる事だ。


ウソをつくのなんて私はキライだった。


ウソはいけない。


だけどこの時、
頑なに…
一生分のウソをついた。




疑われないように

泣かずに、冷静に



大ウソをついて
ついて
突き通した。




……あの真実(コト)だけは…知られたくない。





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