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Best name ~ 追憶 ~

第8章 過去・・・未来・・・そして今



『っ・・・ハァっ…ハァっ…』




車を飛び出して
夢中で走り出してから程ない距離




彼氏の…〃リョウキの家〃だったマンション



今は…リョウキと私とで住んでいる



私たちの家であるマンションが見えてくる









その建物を見て…脱力するような

逆に焦るような

ごちゃごちゃと入り交じる感覚になりながら

私は無我夢中でエントランスのドアをくぐり

エレベーターに飛び乗った






カチカチカチ・・・っ





11階・・・





追われているわけでもない

焦ることもない

そもそも…一度押せば十分なのに






急いで扉を閉めて

私たちの部屋の階のボタンを

震える手でカチカチと何度も押して

私は家へと逃げ帰る







『っ・・・あ・・・っ』






ガタンっ・・・






こんな脚で…よく走っていたな私…





と言うくらい



脚が・・・膝が

全身がガタガタに震えていて



ついにはエレベーターの中で

ぺたん…と座り込んだ








『・・・~~っ・・・うっ…うっ…』







部屋のある階にエレベーターが停止すると


痺れたように動かない脚を

なんとか立たせて

這うようにしてエレベーターを出る









『・・・』




どうしよう・・・リョウキは


帰っているだろうか







家のドアの前で立ち止まる





時間も時間だ

帰っている・・・きっと








ガチャガチャ・・・






シリンダーに鍵を差して回す







この有り様を見られたら


リョウキが何も思わないはずがない







『っ・・・!』





ゴシゴシ・・・っ





私は涙をメチャクチャに拭って

肩が破れてずり落ちたワンピースを

バックを肩掛けにして隠し

ドアをあけた







『た・・・ただいまぁっ・・・!』






うろたえたり…暗い声を出さないように

いつも通りを装うように

私は玄関を通り抜け




一気にお風呂に走って

隠れようと



少し騒がしく

家に駆け込んだ

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