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Best name ~ 追憶 ~

第8章 過去・・・未来・・・そして今

『リョウキ・・・?』




駆け込んだ家の中は…真っ暗だった





もう遅い時間

とは言え…寝る時間でもない






『・・・』


〃まだ・・・帰ってない…〃






玄関にリョウキの靴がないのを確かめて


私は…廊下にへたりこんだ







〃よかった・・・〃






それが正直な第一声






『ハァ…ハァ…ハァ・・・ハァ』





呼吸が段々と落ち着いてくる




慣れた場所…いつもの場所

落ち着く家だから?

それとも・・・







『~~・・・』






廊下の真ん中で

ぺたんと座って…動けない私…





どうしよう・・・早く






せっかく先に帰宅したのに




こんな場面を見られたら

もともこもない



立たなきゃ・・・早く







『うっ・・・!』





落ち着いてくるのと同時に

意識と言うか…感覚がハッキリしてくると

吐き気をもよおしてきて

私は否が応でも焦って立ち上がり

バックも何も、その場に放り出して

よろよろと洗面所へ走った










『うっ・・・~~っ!』





バシャーーーっ・・・





水道の水が…シンクに跳ね返るほど

蛇口を全開にして

吐き気を誤魔化して押し返すように

何度も何度もうがいする





『ブクブクブク…ガラガカラガラ…っ・・・~~』







・・・キュ






水を止めて…ようやく顔をあげると


洗面台の鏡に


私のその姿が映る






『~~っ・・・』






ふわふわに巻いていった髪の毛はボサボサ


破れた洋服がずり落ちて丸見えの肩に


涙でお化粧が崩れてぐちゃぐちゃな目元


それから・・・





唇は…お気に入りのピンクのグロスが


ほっぺの近くまでドロっと流れて


酷い有り様だった・・・







『うっ・・・』





つい先程…起こった事が

色濃くよみがえる







バシャーーーっ・・・




私は再び水道を全開にして

手で水をすくっては

何度も何度も…何度も

ゴシゴシと拭うように

唇をすすいだ







『うっ…うっ・・・うっ・・・~~』







やればやるほど…涙が出て
止まらなかった

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