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Best name ~ 追憶 ~

第8章 過去・・・未来・・・そして今


早く・・・忘れたい


『・・・』



チクチク…チクチク…

チョキン・・・




リョウキが食事をしたり

お風呂に入っている間に



私は自室に籠ったまま

ようやく震えの止まった手で

破れた服を急いで直すと



布団にくるまって

さっさと電気を消した





いつもリョウキと寝ている

寝室ではない

自分の部屋のベットで







コンコン・・・







ビクッ…








先に寝た私は・・・眠ってはいない









『アイル?・・・』






『・・・』






就寝前のリョウキが
部屋を覗いた





私は・・・答えない





布団を被ったまま

強く目を閉じて




寝たフリを・・・した








『おやすみ・・・』








『・・・』





ホッ…





私は布団の中で一息ついた





滅多に寝ない自室のベットで眠るのを
変に思われたか

ただ単に
おやすみ、を言いに来てくれたのか





わからないけれど





今日は・・・リョウキの顔を直視できない






そう思わずにいられなかった私は

それ以上言葉は交わさず

寝たフリを貫いた








ゴトン…っ






『・・・!?』



〃あ・・・っ〃






よりによって

ベットの隅っこに置いていた私のスマホが

床に転げた






『・・・?』



ドアを閉めようとしたリョウキが





・・・戻ってきちゃう





私の・・・バカ








カチ……カチ…




真っ暗な部屋に

ドア付近にあるスイッチを探って

リョウキが豆球をつけた





『・・・』


『・・・っ』









リョウキの足音が…ベットに近づいて

床のスマホを拾い上げる



『・・・』

『~~~っ…』




コト……




リョウキは落ちない場所…

すぐそばのテーブルに

スマホを置き直してくれたみたい






そして…出ていく気配がない





足音が…また私のそばにきて




フワ・・・




『・・・?』


『っ~~・・・zzz』




そんなに寒くもないのに

ミノムシみたいにくるまってる

窮屈そうな私の布団をゆっくりめくって

かけ直してくれた

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