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Best name ~ 追憶 ~

第9章 本当の姿・・・


『私は・・・』





アイルが…少し震える声で話始める

その様子を

オレの家族全員が固唾を飲んで見守った










『私は・・・ずっと

自分の人生に…人並みの
普通の・・・女の子みたいな

そんな幸せなんて…永遠に
ないと思っていました

無いものと思っていたし
なくて・・・良いものだと』







『・・・』

『・・・』

『・・・』








『初めてだったんです・・・』





否応なしに集中してるせいか

か細い…アイルの声は
何故かその空間では

恐ろしいくらい澄みきって
よく通る声に聞こえる






『誰かと一緒になりたい…なんて
そう思ったことも

自分がそう思った、その人が
自分のそばにいることを
望んでくれたことも

私が初めて知った
幸せでした』






『・・・』


〃アイル・・・〃






『そうでなくても…リョウキさんは
私にはもったいない素敵な人です

その上…私は、こんな身の上の人間です
そんな引け目や負い目を

感じずにはいられなくて
私は・・・何度も諦めようと思っていました』






薄々オレもわかっていたこともあれば
オレ自身が初めて
アイルの口から聞くこともあった…









『だけど・・・出来なかった』







『・・・』



『・・・』

『・・・』

『・・・』







『リョウキさんのこと…諦められなかった

リョウキの優しさも、その心も
わかっていても

リョウキが…どんなに
心の底から、そう思っていてくれても

私は…どうしても
自分のその負い目から…逃れられなかった』





アイルが嗚咽を堪えて
言葉を詰まらせていく





『リョウキのご家族に…お会いして

おじさまやおばさま…ケイゴさん
みんなを好きになればなるほど

私は…日に日に、そんな気持ちを
隠しきれませんでした

だから…だから私は・・・』






『・・・っ』

息が…止まるかと思うくらい
オレは緊張しきっていた







『私は・・・正直に話して
その負い目から…解放されたかった

ちゃんと…許してもらって
認めてもらってから

ちゃんと・・・
リョウキさんと…一緒になりたかった』

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