テキストサイズ

Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

『パパおはよう…コーヒーのむ?…』

『ぁぁ、うん』


久々に朝、顔を合わせた父と朝食をとったときのことだ。


難しそうな経済新聞に、くまなく目を通し
私の方を見ない父。



『あのね……パパ
今度、三者面談があって…その…
進路のことで…。
私……獣医学部に進みたいの……それで…』


『うん……そうか』


祖父のおもかげをキレイに残す父は
本当に物静かで
寡黙に、いつもじっと考え事をして
黙々と仕事に勤しむ
まさに、仕事人だった。


口数の少ない父の言葉をひろって読みとくのは
少し難しかった。

父親とはそういうものなのか
そもそも私に無関心なのか、不明だが

とりわけ厳格な父ではない。

父に特別叱責された記憶はなかった。
…逆に何かをダメだ、と言われたことも。



『ぇと…だから……パパ』

『……ママとも、よく話しなさい』



『……。はい』



忙しい父は
朝食を済ませると、早々に出ていってしまった。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ