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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

そして時に転機も訪れる。


ソウタさんの知人のブリーダーの方が
訪れた時のこと…。



商談…と言うのか、ソウタさんは
その人と話をしていた。


私は、その席にお茶を出しに行ったのだが


……ふと、目に留まる


その人の横の…キャリーバック。




『…ど…どうぞ』

「あぁ…どうもありがとう」

お茶を出しながらもチラチラと
よそ見していた。


『?…アイ、戻ってていいぞ』

『……ぁ、はい…』



『…?』

『……』



『アイ…?どうした…』




私は…声をかけるソウタさんではなく
客人の、その人の方を見てばかりいた。



『あ…のぉ……これ…』

「ん?何だい…?あぁ…これね」



その人は、さりげにバックを開けてくれた。



中には…




小さな小さな




仔犬が……横たわっていた。





『ぁ…っ』

「~この子はもう売り物にならなくてね…。
これから〃最期〃をみてくれる所へ
引渡しに行くんだ」


『えっ…どうして…』



死ぬのを待っている…?

そういう事のようで……。





驚いた私は、客人に聞き続けた。


「よく…あることだけどね。
血統のつよい子は、生まれから弱い子も
多くてね…」

『……』


『アイ?…そろそろ、下がってなさい…?』


客人がバックを閉じようとした。


私は、席を外すように言うソウタさんを
無視して……食い下がってしまうのだった。





『ま…まってくださいっ』

「え?…」

『アイ…』



二人とも驚いて私を見る。
特にソウタさんは。





『この子……まだ、生きてるんですよね…?』





「~そう…だけどね……もう」

『ソウ…せっ……先生に、一度…。
先生……ダメですかっ?』


『……アイ…?』



ソウタさんが…私に驚いたのか
承諾して一度、仔犬の診察をしてくれた。




『~~~…残念だけどな…』



ソウタさんの診断で
客人が…バックを再び閉じようとする。



『…あ……の』



私は手を伸ばそうとした。



『アイ…もう、よしなさい』


『……』


『アイ…』








『あの……この子… 私に…

看させてくれませんか…?

…さいごまで』




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