TIME is MONEY
第7章 scene Ⅶ
覚えてない
本当に知らない
「何の事……?」
窺うようにみた雅紀の表情は変わらない
「まあ、かずは覚えてないと思うよ?…だってあの時は多分中学生あたりだしね」
雅紀に言われた中学時代を必死に思い出す
確かにあの頃は “天才少年“ とか囃し立てられて、言われるままにパソコンをいじくってた
面白いくらいに大人が出来ない事をやってのけて、子どもならではの優越感に浸ってた
そして言われた通りに難しい図面を父に教えて貰いながら作ったり、何だか良く分からない数字の並んだものを作った記憶はある
「多分それ。その資料、最終通達に来たときに “息子が天才だと使える“ って笑ってたから」
俺は父が嫌いだった
自分の苦手なパソコンを散々俺にやらせて良くない事に使ってるのに薄々気付いてた
だから高校はわざと離れた全寮制を選び、そのまま卒業後はフリーター生活をしてたんだ
誰に迷惑も掛けたくない
金さえあれば適当に生きていける
“時は金なり“ …時間は大切に
1秒たりとも無駄な時間なんて存在しない
…なんて聞いた事はあったけど
そんなもん、俺にしたらどうでもいいものだ
その気持ちは今も、変わらない