TIME is MONEY
第1章 scene Ⅰ
「…自由にさせてくれよ、もう」
自分でもはっきり分かるくらいの情けない声
もう、強気にいるのも疲れた
“洗脳“ が溶けた今、全身から力が抜けてしまったようだ
「かず……」
雅紀の肩を掴む力が弱まったのが分かったけど
立ち上がる気力もなくて
ここで逃げておけば
多分俺は今までのお気楽な生活に戻れていたんだと思う
だけど、本来の負けず嫌いが災いして
気力がないくせに、近付いた雅紀の顔に唾を吐いて
「ふざけんな…」
その汚れた顔を睨み付けた瞬間
俺は逆に動けなくなってしまったんだ
見たことのない、雅紀の鋭い眼光
この顔を見たら、普段のへらへらした顔なんて絶対に想像がつかない
初めて “怖い“ と思った
“蛇に睨まれた蛙“ ってこんな心境なんだろうか
恐怖に目が離せない、なんて初めての経験で
憎まれ口叩きたくても、そんなの許されるような雰囲気じゃない
「ま…さき…?」
「随分な事、してくれんじゃん」
口角は上がってるけど、全然笑ってない
むしろ怖さが増長されてる