TIME is MONEY
第1章 scene Ⅰ
グイッと顎を掴まれる
雅紀の大きな手が、俺の両頬に食い込んで背く事を赦さない
指が食い込む頬が痛い
「…おとなしくしてりゃ、それかよ」
「……っ」
「さすがに唾掛けられるとは思ってなかったな」
口調はおどけているからこそ
その冷たい目が、怖い
だけどここまで来て怖いなんて言えなくて
睨み付ける事を続けていたら
「…その目、ぞくぞくする」
冷たかった目が、違う光を携えて
指の力が少し弛んだ
「……え」
俺の中の本能が警鐘を鳴らす
何だか分からないけど、絶対的に危険だと脳が訴えている
「…痛ぅっ」
再び指の力が入って、頬が歪んだ
…これ顔に痣が残るかもな、…なんて関係ない事を考えるのは
危険から頭が逃げてる証拠
「いいね、…もっと睨んでよ」
雅紀がニヤリと笑う
「……っ」
怖い
マジで怖い
普段へらへらした奴だからこそ、余計に怖い
だって何考えてるか全く見えないんだよ
雅紀の顔が近付いた
吐息が顔に触れて、ぞくりと背筋が粟立つ
次の瞬間には、目の前の視界いっぱいに雅紀の顔が広がって
……唇を雅紀のそれで塞がれていた