TIME is MONEY
第1章 scene Ⅰ
散々走らされた挙げ句、再びグイッと腕を引かれて入り込んだ小さなビルとビルの隙間
ようやくそこで、走る事から解放された俺は
その場に座り込んでしまった
もう動けない
動けない、じゃない…足が動かない
必死に肩で息をして、何とか整えようとするけど
あれだけ走らされた後では
そう簡単には戻らなくて
「…ごめん、大丈夫?」
無理矢理俺を巻き添えにした張本人は、息切れはしてるものの、俺ほどは疲れてない様子で
俺の目の前にしゃがみこむと、心配そうな顔を向けた
「何なの一体…」
言ってやりたい事は沢山あるけど、疲れすぎて言葉が出てこない
「いやごめん!本当は女の子のが都合良かったんだけどさ、君しか歩いてなかったから」
「は?」
「1人より、カップルに見せた方が目眩ましになるでしょ」
…いやだからさ
そんな情報じゃなくて、俺は何でこうなってるのかを聞きたいんだよ
「とりあえず…ちゃんと説明するからちょっと待って?…もうすぐ迎えが来るから」
ー…それから説明するから
俺の事情なんてお構いなしに話を進めるそいつ
「あ、名前聞いてもいい?
…俺は雅紀って言うの」