TIME is MONEY
第2章 scene Ⅱ
「翔に電話しろよ」
「分かったよ、…あーあ、また説教かぁ」
さっさと怒られとけ、バカ
渋々スマホを取り出す雅紀を横目に、俺はキッチンに向かった
カップを出してコーヒーメーカーのスイッチを入れる
仕方ないから雅紀の分もいれてやるか
…ついで、だからな
あくまで “ついで“
コーヒーの良い香りに包まれながら、コポコポとコーヒーの落ちるさまを
俺は椅子に座ってぼーっと見つめていた
あの日
雅紀に襲われたのは何だったのか
最後までヤラれなかったとは言え、無理矢理何度もイカされて
男のプライドなんてのは粉々に打ち砕かれて
絶望しか残されなかったのに
…それなのに、何で俺は未だにここにいるんだろう
何と言おうと強引に逃げ出して
警察でも何でも頼れば良かったのに
どうしてそれをしなかったのか
…自分でも分からない
俺がいなきゃこいつは仕事が出来ないとか
家事を今さらするのが面倒臭いとか
最もらしい言い訳を考えて、それを自分に言い聞かせて
逃げない理由を作り上げている