TIME is MONEY
第4章 scene Ⅳ
「お前さ……」
翔の声は冷たい
「…だから何だって」
「とぼけんの、やめたら?」
小さく、こめかみが動いた
翔がそれに気付いたのかは分からないけど
確かめる術は見つからない
「…何のことか分かんねぇな」
「ふん…俺が気付かないとは思ってないくせに」
“分かっててやったんだろうが“
翔が唇を歪めて笑うから
「さあね」
俺も同じように、唇を歪めて見せれば
「…あれ、どこで手に入れた?」
雅紀からは見えない、シンクに置いた俺の手首をきつく掴む
「…っ!」
ギリギリと食い込む翔の指
「言えよ」
恐ろしい位鋭い瞳に浮かぶのは、怒り?
…あり得ないと思う驚き?
少なくとも好印象ではないな
「…それこそ、あんたなら気付いてんだろ」
「って事は当たりか」
「……さあね」
“離せ“ と口パクして手首を掴んでいる翔のそれを軽く叩くと
思ったよりも簡単に、それはほどかれる
「あーあ、痣になってる
…雅紀ーっ!こいつ凄いバカ力なんだけど」
これ以上の話はしない、と言う意思表示に
わざと雅紀に話し掛け、翔の追撃を強引に遮った