TIME is MONEY
第5章 scene Ⅴ
「…雅紀が本当に気付いてないと思う?」
帰り際、玄関でふいに翔が振り返った
「え?」
「何でもない、…じゃあな!雅紀にさっきの奴食わせろよ」
だけど匂わせただけで翔はそこからは何も言わず
ただ “夕飯に食え“ と持ってきた弁当の事を俺に言ってきた
「おい、翔…!」
ヒラヒラと手を振った翔が扉の向こうに消える
追い掛けたとこで答える訳なんかないのは重々承知
「ほんっと食えねぇ奴」
そう独り呟いて、たらたらと奥に戻った
聞き返してはみたけど、しっかり聞こえてたよ
“雅紀が気付いてないと思うか“ って言葉
正直俺だって考えてるよ
あの、スイッチの入った時を見れば
単なる天然バカじゃないって分かるんだから
そういや、あいつ最近変な事を良く言うようになったな
“今、流れてるこの時間って大事にしなきゃ“
“この1秒は、もう戻せないんだよね“
“時は金なり、…時間をお金で買えるなら買いたいよね“
やたらと「時間」を気にするようになった気がする
いや、「時間」と言うか時の進みに敏感になってるような…曖昧だけどそんな感じ