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華は儚く美しく

第2章 桜色の想い

 それから数日後。鈴の音が聞こえたかと思うと、コンコンと窓を叩く音が微かにした。隙間を覗くとあの少女。


「あっ……」


「また来ちゃった」


「桜ちゃん?」


 僕はあの時に誰かが呼んでいた名前を思い出して、ふいに呟く。


「ん? 名前、教えたっけ?」


 桜は、自分の名前の肯定と共に疑問を投げ掛けた。


「前、誰かに呼ばれてたから。よかったらでいいんだけど、苗字、教えてくれる?」


「月ノ宮(ツキノミヤ)。月ノ宮桜だよ。君は? 我の名前だけ知ってるなんて、ずるいぞ」


 桜が、ずるいぞと言いながら頬をぷくーっと膨らませるもんだから、僕は思わず笑ってしまった。


「何が可笑しいんだ?」


「ごめんごめん。頬を膨らましてる桜が可愛かったから。あ! 僕は、田島右佐(タシマ ユウサ))だよ」

「可愛くないもん!」


 桜は拗ねた振りをする。本当は嬉しいということが、林檎のように紅くなった頬から窺える。そんな桜を微笑ましく思う。

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