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華は儚く美しく

第2章 桜色の想い

 最後に桜を見てから二ヶ月が経った六月二日。満月の夜。

 居間から聞こえてきた声。

「今日、本能寺で戦があったみたいよ。確か、明智(アケチ)軍が攻め込んだとか」

 僕は、玄関に向かった。

「右佐! 何処に行くんだ!」

 父上は声を荒げ、僕の手を握る。

「本能寺」

「戦があった場所にか!? お前は、身体が小さい頃から弱いんだ」

「それがどうした! 大切な子がいるかもしれないんだ。離せ!」

 父上は僕が初めて見せた反抗に驚いて手を離す。その隙に外に飛び出した。

 走る。息を切らしながらひたすらに。本能寺の前に着く。 激しく燃える炎。門外からでも伺える死体と血の海。

「桜っ!」

 僕は叫ぶが、聞こえるのは炎の音のみ。門内に入ろうとする。だが、それは叶わなかった。後ろから抱きしめられたのだ。

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