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華は儚く美しく

第1章 戦乱に散る桜

「桜……ごめんな。気づかずに」

 光秀は刀を下ろした。小さな頃のことを思い出していた。

 あの頃は何も考えずにただ無邪気に。いつから歯車は狂ってしまったのだろう。

「いいえ。光秀様のせいではありません。申し訳ありません。我は私情にて信長様を守れなかった。最低です。光秀様、今まで楽しかったです。さようなら……」

 そう言い残すと桜は、自分の刀を持つと目を瞑り、思いっきり喉を貫いた。

 桜は信長に重なるようにして永遠の眠りにつく。それはまるで散りゆく桜の花のようだった。

 月は炎と二人の血で紅く染まっていた。

 光秀は桜のすぐ近くに落ちている鈴を拾うとそっと涙を零した。“お兄ちゃん”と笑うあの日の桜を思い出して。


End

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