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隣は空席のまま…

第6章 一軒家の他人


その日私は、マスターの所で豆の仕込みと軽食のヘルプに入った


マスターは、日に日に腰痛が酷くなっているらしく長時間の立ち仕事が、辛いらしい


先週から豆の選抜を、担当していたが焙煎も頼まれ始めた


「そうそう、彩芽ちゃんは仕事の飲み込みが早いなぁ」



マスターは、コルセットをしている腰を撫でながら私の何度目かの焙煎豆を見ている



マスターの教え方はゆっくり丁寧で…




勤めていた時――――…定年間近の部長を、思い出した




あの部長も…丁寧だった


若い社員は部長の事を“化石”だの“ヴィンテージ”だの影で言っていたが――――…



丁寧な仕事を馬鹿にしているみたいで…いい気分はしなかった



結局――――…行き着く仕事の結果は“丁寧にちゃんと出来たか!”である



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