テキストサイズ

知らない世界

第3章 反省

俺の頭を撫でていた手が、肩におりてきた。
その手は俺から離れず、俺も引き寄せられた訳でもないのに、この人にもたれかかった。


「どうした?どこか痛むのか?」

「あっ、すみません。
別に痛むって訳ではないです」

「いいよ。
この方が楽なら、このままでいいよ」


家に着くまで、この人にもたれかかっていた。
肩に回されている手も、さっきまでと違い、ギュッと掴まれていた。
振動が伝わるんじゃないかと心配になるくらい、俺の心臓はドキドキしていた。
ドキドキしながら、なぜか思った。


「家に着かなければいいのに・・・」


それは自分でもよくわからない。
なぜこんなことを思ってしまったのか。
ケガをして、親切にしてもらったから、優しくしてもらったから・・・だよな。

体を起こそうとすると、肩に回されている手に力が入っているように思えた。
俺の事を見ているわけではない。
ただずっと外を見ている。

回された手に力が入っているのはなぜなのか?
遠慮するな・・・なのか?
楽にしていていいよ・・・なのか?
それとも、離れるな・・・なのか?

俺がケガをしているから、遠慮しないで楽な格好していいよって意味だろうね。


「深い意味なんて、ないよな」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ