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知らない世界

第30章 恐怖からの解放

「いらっしゃい・・・
あぁ、大野さんお久しぶりです」


閉店間際、大野さんが入ってきた。


「大野さん、ビールでいいですか?」


俺をチラッと見る大野さん。


「いやっ、ビールはいいよ。
飯食ってないから、何か適当に頼むよ」

「潤ですね?」

「あぁ、こいつこう見えても真面目だから」

「大野さんも潤の言うこと、ちゃんと聞いてるんですね」

「俺だけじゃないよ。兄貴だって、うちの若いやつらも、何かこいつの言うことは聞くんだよな」

「それだけ潤が皆さんに気に入られているって事ですね」

「そうだな」


大将と大野さんがそんな話をしている間も、俺はお客さんの相手をしている。

閉店時間、最後のお客さんをいつものように見送った。


「潤」

「はい?」

「いいぞ、あがって」

「でも・・・じゃあ大野さんが済んだら」

「おぉ、それまで頼むな」


俺は大野さんの食事が済むまでに、後片付けをした。


「お袋さんの店の手伝いと同じだな」

「家の方は顔見知りばっかりだから、ちょっと手を抜いていましたよ」

「でもこう言う仕事、好きなんだな。
お前にあってるのかもな」


話ながらも、手は止めなかった。

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