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夜空は百合の花を狂気的に愛す

第5章 ラベンダー



《ユリさん。俺達ね、小さい頃に母親に捨てられたんだ。》

《俺たちの母親はね、俺たちのことが大嫌いで顔を会わせるたびに産まなきゃよかった、いらない子って言われてたんだ》


そうだわ、思い出した。


確か夜くんが言っていた。

自分たちは母親に捨てられた、と。だから母親の愛がわからないって。

なのに…本当は2人のお母さんは亡くなっている?

どうゆうこと?あれは嘘だったの?

ぐるぐると彼らのことを思い出して考えるが答えは出ない。

そんな私の心情など知らない鏡夜さんは昔を懐かしむように話し続ける。

「妻が亡くなって、2人が産まれてからはね、海の近くに引っ越すことにしたんだ。そこにしばらく住んでいたんだけど、如何せん私の仕事は海外出張が多くてね…2人を置いていくことが多かった」

心臓が高鳴る。

また、 嘘 を見つけてしまったから。

「…ふたり、も一緒に海外に行ったんじゃ?」

そう言っていた。だからキスは挨拶みたいなものだって。

鏡夜さんがキョトンとしたような顔をしてから笑う。

「ハハもしかして2人がそんなこと言ってたのかい?あの子たちは頑なに海外には行かない、日本に残るって言うから仕方なくいつも置いていって知り合いに任せていたよ。」

なんで

どうして

彼等は嘘ばかりだ

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