夜空は百合の花を狂気的に愛す
第5章 ラベンダー
そして私と鏡夜さんはそのまま買い物へ行くことになった。
鏡夜さんの車に乗って、窓の外を眺める。
なんだかんだいって鏡夜さんと2人きりになるのは初めてだから何を話していいのかわからない…
気まずさを逸らすために必死に窓の外を見つめていれば、鏡夜さんが口を開いた。
「夜と空とは上手くやっているかい?」
「…はい、2人とも仲良くしてくれています」
一瞬、どきりと心臓が跳ねた。
もしかして2人とのあの行為がバレているのかと思った…
「あの子達は我儘だろう?自分の思い通りにならないと気が済まない。」
「そう、ですか?そんなことないと思いますけど…」
「そうかい?ユリちゃんの前では良い子でいようとしているのかな。あの子達が産まれた時に母親が亡くなってからというもの、私が男でひとつで育ててね。よくあそこまで立派に育ったものだよ」
懐かしそうに目を細めて話す鏡夜さん。
あれ
何か違和感を感じる。
「最初はね、すごく後悔したよ。私との子供を産むために愛する人が亡くなったのだから。けど産まれてきたあの子たちを見たらそんな後悔すぐに消えたさ。亡くなった彼女のためにも私が精一杯育てようって決意したんだ」
「亡くなった…?」
「ああ、そう、私の前の妻はね、元々身体が弱いのもあって出産と同時に亡くなってしまったんだ。」
ん…
なにこのモヤモヤは…
私は何か忘れている気がする。